グローバル開発を効率的に進めるの方法は「言葉」よりも「文化」や「習慣」の理解
外資系企業で勤務をする人に複数の国の担当者と共同で仕事をする際に、共通言語である英語を全員流暢に話せたとしても、お互いの文化や話をする際の癖をきちんと理解するまで、仕事の効率は上がらないとのことでした。
当社(ハイブリッドテクノロジーズ)は、ベトナムに開発拠点を有していることから、日本でご依頼頂いた開発案件の仕様をまとめ、ベトナムに指示する必要があります。当社では、日本とベトナムをつなぐブリッジ・エンジニア(BrSE)の中に日本人もいれば、ベトナム人もいます。また、日本のBrSEのベトナム人は日本での滞在期間も長く、日本語検定1級等の資格も有しており、生活に困ることはないのですが、今回より高度な日本語を習得して頂くことで、これまで以上に言葉の壁によるコミュニケーション不足の解消と高い日本語力によりどの程度生産性が向上するかを計測するために、「日本語.com」を運営するGEパートナーズ様と日本語力向上の実証実験を開始することとなりましたので、今回の実証実験の目的、経緯、背景などをGEパートナーズの木本社長に尋ねましたので、詳細をお伝え致します。
■ 日本語レベルは高くても、日本語に不自由するベトナム人も
ハイブリットテクノロジーズ広報担当(以下、HT広報)
今回、GEパートナーズ様とハイブリッドテクノロジーズで日本語力向上の実証実験を行うとのことですが、具体的にどのようなことを行うのでしょうか?
GRパートナーズ木本様(以下、木本さん)
GEパートナーズでは、外国人向けに日本人の教師と日本語を学びたい外国人が1対1で日本語習得を目指す「日本語.COM」というサービスをオンラインで提供しています。
今回、ハイブリッドテクノロジーズと共同で行う実証実験では、「日本語.COM」が提供している日本語習得に、IT業界特有の言い回しやITエンジニアが日常的に使っている言葉を加えた「日本語.COM(ITコース)」を用いて、「日本語.COM(ITコース)」で学んだハイブリッドテクノロジーズのBrSEの方々の語学力がどの程度変化するか、専門用語を理解した上で生産性がどの程度変化するかなどを計測することを目的とした実証実験になります。
(HT 広報)
ハイブリッドテクノロジーズのベトナム人BrSEは日本語検定1級を持っている方も多いですし、日常的に見ても日本語力は高いと思うのですが、あえて実証実験をする意味はなんでしょうか?
(木本さん)
日本に来日するベトナム人の多くは、「日本語検定1級」を持っている方が多いですね。
また、国費で留学していたり、日本政府からの援助で留学した人も多くいます。ただ、ベトナム人に限らず、他の国の方もそうですが、「日本語検定1級」を持っていても、「話す」、「聞く」、「読む」、「書く」の言語習得の4要素のうち、「読む」と「聞く」ができるものの、「話す」と「書く」が出来ない外国人が多くいます。ゆえに、「日本語検定1級」だからと言って、日本語に苦労していないかと言うとそうとは言い切れないのが実情です。
また、ハイブリッドテクノロジーズは、長年に渡って独自に日本語習得を行なってきているとのことで、在籍するベトナム人BrSEの日本語力は高いと思います。今回の実証実験で、パートナーとしてハイブリッドテクノロジーズを選ばせて頂いたかと言うと、ハイブリッドテクノロジーズがこれまで培ってきた日本語習得術をさらにブラシュアップしたいとの思いもありました。
(HT広報)
経済産業省は、2030年までに国内のITエンジニアが79万人不足するとの試算を出しており、不足分を補う策として外国人採用の必要性を問う声も聞かれますが、外国人エンジニアと日本人エンジニアの言葉の壁問題は深刻なんでしょうか?
(木本さん)
先ほど、「日本語検定1級」は持っているものの、「話す」と「書く」が苦手な外国人が多いと言いまいたが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い在宅勤務が増えたことで、これまで「話す」と「書く」が求められなかったものの、在宅勤務とオンラインでのやりとり増加に伴い「話す」と「書く」スキルについての壁が深刻さを増しています。
(HT広報)
コロナ以前は、言葉以外のコミュニケーション(身振り・手振り)での意思疎通ができていたものの、オンライン下では意思を伝えるのも「文字」か「会話」になりますもんね
(木本さん)
ハイブリッドテクノロジーズのように社内でベトナム人が複数いれば、在宅になっても同僚のベトナム人にベトナム語で会話したりすることで、ストレスもないと思いますが、ベトナム人エンジニアを受け入れている会社は、スタートアップやベンチャーが多く、受け入れ人数も1〜2人なので、相談できる相手が十分にいないことから、モチベーションの低下、業務力低下、離職などが増加しています。
(HT広報)
今回の実証実験では、「読む」、「書く」、「聞く」、「話す」の4要素とIT業界独自の言葉使いも学ぶことで、コミュニケーション全体の習得を目指すのでしょうか?
(木本さん)
コミュニケーション力を学んでもらう実証実験になります。
また、面白い取り組みとして、ベトナムと日本の習慣的な違いも学んでもらっています。
(HT広報)
習慣的な違いとは?
(木本さん)
例えばですが、日本人は考えながら間をつなぐ時に「えーっと」と感動詞を挟みますね。それがベトナムの方の場合は「舌打ち」を使われる人が多いです。そのため、このような異文化になれていない日本人からするとびっくりすると同時に不快感を覚える場合もあります。
(HT広報)
「えーっと」と「舌打ち」は日本人からすると違うように感じますが…
(木本さん)
そうなんです。ベトナム人は悪気があって舌打ちをしているのではないのです。
また、IT業界で「本番環境へデプロイする」などとよく使いますが、日本語発音の「デプロイ」と、ベトナム発音の「デプロイ」は全く別の音になります。これは英単語を日本人は最後までキッチリ発音する傾向にあるのに対して、ベトナムの方は後半部分をほとんど発声しないという音声文化の違いからくるものです。両者とも同じ英単語を指しているのに、なぜか伝わらないのは日本人のカタカナ英語が正確な発音でないこと、ベトナム人の英単語発音が少し特殊であることが重なっているからなんです。このようにIT業界では英単語なんだから伝わるだろうと思っていると全く伝わらないのと同じで、同じ意味で、同じ単語でも伝わらないことがあるので、開発現場で使われる日本人の発音をしっかりと学んで頂き、文化的な齟齬をなくすことも今回の実験には組み込まれています。
強調したいのは、我々は決して外国の方に日本人化を強制したいのではありません。異文化は異文化のままでいいと思います。ただ実際に日本で仕事や生活をする上で困ることがないよう、「日本ではこのような文化や発音がありますよ」という活きた知識をお伝えしたいだけです。同じものを双方が頭では理解しているのに、伝わらない現実はあまりにもったいないですから。
(HT広報)
ネットの検索等で「オフショア 言葉の壁 失敗」などのキーワードがありますが、言葉の問題ではなく、コミュニケーション力の問題ということになりますね。
(木本さん)
おっしゃる通りです。ですので、今回の実証実験では、約2ヶ月間に渡って月10回程度の1対1の会話授業と、IT業界で使われる言葉をピックアップして作った自習用教材の提供及びその利用に関するコーチングを行うことで、コミュニケーション力全体を高めていこうと思います。
また、今回の実証実験により、外国籍従業員の平均生産工数の増加、日本人によるマネージメントコストの低減、 離職率の低下、 外国籍従業員エンゲージメントの上昇ができればと考えております。
Ed-techへの取り組みとして、河合塾グループのKEIアドバンス社との業務提携の裏話もブログにまとめておりますのでご確認ください。
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