今一度、デジタルトランスフォーメーションを考えみる
「デジタルトランスフォーメーション」という言葉が定着してきましたが、
「デジタルトランスフォーメーションとは?」「DXとは?」
で悩まれている方も多くいると思います。
下のグラフは、Googleトレンドで2019年1月から2021年6月20日までの期間に「DXとは(?)」で検索されたボリュームをグラフ化したものですが、
多くの人が「デジタルトランスフォーメーション」という意味を探していることが分かると思います。
■「デジタルトランスフォーメーション」とは「DX」、「DX」とは、「デジタルトランスフォーメーション
「デジタルトランスフォーメーションとは(?)」
「DXとは(?)」
2つの言葉の背景や意味は、以前こちらのブログで書いた記事を参考にして頂ければと思いますが、今回、改めて2つの言葉の検索ボリュームを出してみると、「デジタルトランスフォーメーション」と「DX」が別々の物と考えている方がいるのではないかと思いました。
思い返すと、会議の中でも「デジタルトランスフォーメーション推進」という言葉を使う方もいる一方で、「DX推進」という言葉を使う人もおり、言葉に悩んでしまう人が出てしまう原因になっていると思います。
ですので、今回の記事では、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」と書いてきたいと思いますが、言葉はことなれど、同じ言葉なので、まずは安心して頂ければと思います。
それでは、企業にデジタルトランスフォーメーション(DX)推進が求められている理由をご紹介していきたいと思います。
■デジタルトランスフォーメーション(DX)推進が求められる3つの理由
企業にデジタルトランスフォーメーション(DX)推進が求められている理由は、
経営面
人材面
技術面
これら3点(①〜③)が企業にデジタルトランスフォーメーション(DX)推進が求められている理由になります。
それでは、一つづつ見ていきたいと思います。
「①:経営面」で求められるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進
2018年9月に「経済産業省・デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」が発表した「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開」によると、今後、IoT技術の進歩やオンライン取引の増加により、顧客の購買データや製造過程のデータなど、これまで以上に取得可能なデータが増えると考えられています。
また、取得したデータをもとに、新しい商品開発に活かしたり、製造工程において不良品が発生しやすい箇所が明確になることで、顧客の希望を反映し、不良品の発生率を抑えた商品提供が可能にもなってきます。
ここまでの話の中で、「夢のような仕組み」と思うかもしれませんが、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進により、これらが「夢の話」ではなくなると言われています。また、読者の方には、「データなら既に取っているけど、上に書いているようなことなんて出来ない」と考える方もいると思いますが、多くの企業でデータの利活用が進んでいないのが事実です。
企業においてデータの利活用が進んでいない背景として、
導入している基幹システムが個社仕様になっている
これは、1980年代から2000年代にかけて、多くの企業で導入が進んだ基幹システムが個々の部署の要求を満たすために、カスタマイズされたことで、他部署や他社と情報共有が出来ない仕様になっていることが起因しています。
では、個社仕様になっている基幹システムをカスタマイズすることで、部署間や他企業との情報共有を行えるように設計すれば良いのではないか?と思われますが、ここに2つ目の課題があります。
過度な個社仕様により基幹システムがブラックボックス化している
基幹システムの導入が進んだ1980年代から現在に至るまで、企業の基幹システムを自社で運用・保守している企業は少数であることが一般的です。基幹システムの設計時から外部ベンダーに依頼しており、社内の一部のエンジニアと既存の基幹システムをベースに増改築を繰り広げているのが現状です。それゆえに、全体を把握しているエンジニアが退職などで会社を離れたことに加え、個々の部署や企業の需要に適した増改築(カスタマイズ)を繰り広げたことで、何を追加もしくは、解放しようとすると、別の何かが不具合を起こす可能性が高いシステムになってしまい、結局のところ「ブラックボックス化」しているのが現状です。
これらにより、企業が持つIT予算の9割が既存の基幹システムやITシステムの運用・保守に使われており、新たなIT投資が進まないことで、IT投資を積極的に行う競合他社や異業種に市場を簡単に奪われてしまうことが危惧されています。
ちなみに、2018年に利用年数が21年以上の基幹システムが2割あり、2025年には6割の基幹システムが運用基幹21年以上になると予測されています。
これらから、過去に構築したITシステムへの費用負担を続けることで、各部署が求める仕様に部分的な最適化は行われるものの、取得したデータを経営に活かすための全体最適化には程遠い状況に置かれており、今後の競争を勝ち抜くためにも、会社全体でIT投資の目的や方法について早急に手を打つ必要があると考えられています。
「②:人材面」で求められるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、「人手不足」という言葉を聞く回数は減ったかと思いますが、中央大学とパーソル総合研究所が2018年10月に発表した「労働市場の未来予測2030」によると、「建設」、「金融・保険・不動産」、「農林水産業・鉱業」を除く全ての産業で労働人口が不足し、2030年には644万人の労働力が不足すると予測されています。
では、不足する労働力をどのように補足するかと言うと、
女性の社会進出で102万人
高齢者の社会進出で163万人
外国人労働者の活用で81万人
これらに加えて、既存の生産方法を見直し、既存の労働力を活かしたデジタル化により298万人分の不足を補う必要があると言われています。
これまで、生産力を高める方程式として
「生産力 = 労働人口 × 労働時間」
が使われてきたかと思いますが、「働き方改革」により、労働時間が厳しく管理されたことに加え、今後、「労働人口」も減少するため、デジタルを活用することで労働人口問題を解消しつつ、1日8時間の労働時間をどれだけ効率的にするかが求められることもデジタルトランスフォーメーション(DX)に求められる要素の一つになります。
「③:技術面」で求められるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進
①の「経営面」と②の「人材面」に深く関連するのが、技術面だと考えられています。
2020年から5Gの実用化が本格化しており、5Gが普及することで4G(LTE)で発生したデータ遅延問題が解消されることに加え、様々な機器にセンサーが取り付けられることで、これまで取得できなかったデータ取得が可能となるIoTの普及が爆発的に進むと考えられます。また、膨大なデータを処理するためにもAI(人工知能)を活用したデータ分析やデータを活用した予測分析なども今後の必須事項になると考えられています。
そこで課題に上がるのは、誰がそれらのディレクションを行うのかになると考えられています。
これまで、企業のシステム開発において、要件を事前に決めて要件に適したシステムを開発するウォーターフォール型開発が採用されてきましたが、今後は、事業の置かれている状態が常に変化することを前提に、取得したデータをもとに、要件が常に変わる中開発を行う必要が生じるため、従来のウォーターフォール型からアジャイル型が主流になると考えられます。
また、これまで社内調整やベンダー管理が主業務であった情報システム部門の役割が、大きく変わりベンダーをパートナーとして刻一刻毎に変わる状況を把握しながら、開発の指揮を取る必要が求められます。これにより、最新の技術に関するノウハウを持ちつつ、海外の事例や研究結果を開発に反映させることも求められます。
しかし、スイス・ローザンヌに拠点を置くビジネススクール「国際経営開発研究所(IMD)」が毎年発表している「デジタル競争力ランキング」において、日本のデジタル技術スキルは63ヵ国中62位となっており、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進において、技術力を持ったパートナーをいかに探すかが重要にもなっています。
いかがでしたでしょうか?
「①:経営面」、「②:人材面」、「③:技術面」。
これらの視点から企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)推進が求められる背景や理由を紹介しましたが、要約すると、
次世代の経営において、データを活用することは避けられないものの、現状のシステムを維持し続けることは、部分最適はできるものの、次世代の経営を安定させ、飛躍するには、現状維持は決して最適解ではないという状況に経営が置かれています。また、現状から次世代にも飛躍し続けるためには、「生産力 = 労働力 × 労働時間」の公式ではもはや太刀打ちできないため、労働力や労働時間を最大化させるためにデジタル化できるところをデジタル化する必要があるものの、デジタル化する人材と技術力が不足している。
以上のように、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進が求められる背景は上記のようになると考えられます。
一方で、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、社内の押印文化が無くなったり、商談や会議がオンラインになった方も多くいると思いますが、遅々として進まなかった社内のデジタル化がここ1年で急速に進んでいる状況でもあります。
実は、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進は、
STEP1. デジタルルーツの導入、個別領域へのデジタル適応
STEP2. コスト構造の抜本的転換。アジャイル型組織への転換
STEP3. 新しいビジネスモデルへの転換。データの活用
上記のように、大きく分けて3つのステップによって成り立つと言われており、新型コロナウイルス感染症拡大にてこれまでアナログ的に行われた業務にデジタルツールが導入されたことで、初めて「ステップ1」に足を踏み入れたと言われています。
このような状況の中で、
経営に活かすデータの取得を行いたい
減少する労働力をデジタルを活用して補完したい
経営に活かすデータを効率的に取得し、労働力の補完を行えるデジタル技術力を求めている
このようなリクエストに答えてくれるパートナーを探すことがデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を始めるに際して、最も求めらているアクションだと考えています。
この記事を読んで頂いた企業の方で、少しでもご興味をお持ち頂ければ、ハイブリッドテクノロジーズまでご相談のご連絡をいただければ幸いです。
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