金融業界におけるDXの取り組みについて解説!今後の課題や活用例についても紹介
そもそもDXって?
DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略語です。DXにはデジタルによってビジネスや社会を改革していこうという意味が込められています。
DXの初出は2004年です。スウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が論文で「ITの浸透によって人々の生活があらゆる面でよい方向に変化する」と提唱したことが、この概念が生まれたきっかけといわれています。
DXはIT 技術を活用する事で、人々の不便を無くしたり生活を豊かにし、新しい関係性を作り続けるものです。DXを導入し、生産性の向上や成果を上げることが求められています。
関連リンク:デジタル・トランスフォーメーション(DX)とは?
DXはなぜ必要なのか?「2025年の崖」って?
小学校におけるプログラミング教育の必須化が記憶に新しいと感じる人も少なくないでしょう。日本はIT人材が不足しており、IT人材を増やすことが重要な課題となっているのです。
ITシステムの更新に遅れをとっている日本では「2025年の崖」という問題を抱えています。2025年の崖とは経済産業省が2018年に発表したDXレポートではじめて使われました。
日本企業が市場で勝ち抜くにはDXの推進が必要不可欠であり、DXを推進していかなければ競争力の低下は避けられないと、DXレポートにおいて問題視されています。そして、DXの推進に遅れた場合、2025年から年間で現在の約3倍、約12兆円に及ぶ経済損失の可能性が懸念されているのです。
2025年の崖における問題は、以下に挙げる問題と密接に関わっています。
・IT技術者の枯渇
少子高齢社会も影響し、IT技術者が圧倒的に不足するといわれています。経済産業省の試算によると、2025年には約40万人のIT技術者が不足するとのことです。
・既存ITシステムの老朽化
既存システムの老朽化はITシステムを維持できる技術者数の低下とも深く関係しており、旧システムに対応できるIT人材が不足すると考えられています。
旧システムには企業専用情報システムやオンプレミスの情報システムといった、自社専用に設置されたITシステムが含まれます。これらは、誰が見ても分かるプログラムとして設計されているわけではありません。開発者と自社の情報システム部門がメンテナンスを行うことを前提とした設計になっています。
2025年には、技術者の中で定年に達する人が多いため、当時のプログラム言語が分かる人が大幅に減少するといわれています。
それでは、2025年の崖によってどのような問題が引き起こされるのか見ていきましょう。
2025年の崖で懸念される問題は以下の通りです。
・既存システムが停止する
・メンテナンスコストの上昇
・メンテナンスや監視ができなくなり、情報漏洩や不正アクセスのリスクが高まる
・新システムに蓄積したデータを移行できない
これらの結果として、
・自社業務システムの維持ができなくなる
・保守にIT人材を割く必要性が出てきて、最先端デジタル技術開発に人をまわす余裕がなくなる
・ビッグデータの活用をできずDXの波に遅れる
といった不利益が懸念されます。
日本において各企業のDX推進は全体的に遅れをとっています。特に、中小企業ではDX推進に充てられるノウハウや人材が不足しており、多くの企業が深刻な状態にあるといえるでしょう。
関連リンク:DX推進の成功するポイントとは?推進するメリット・課題についても解説
金融業界におけるDX推進の課題
さまざまな業界で急速な普及が必要とされるDXですが、導入にあたって問題が生じるケースも少なくありません。このことは、金融業界においても例外ではないといえるでしょう。
金融業界でDXを推進する上での課題を紹介します。
企業や業界全体での風土の問題
お金を扱う金融業界ではミスが許されません。また、金融業界は顧客からの信用を第一に考えています。こうしたことから、金融業界では新しい風を吹き込みにくいという風潮があります。
書面に押すハンコや対面主義などにもいえるよう、新しいことをはじめたり、慣習を変えたりすることは拒まれる傾向にあるといえるでしょう。金融業界の伝統を重視する姿勢は、「顧客との良好な信頼関係はこれまでに積み重ねられてきた一つ一つが繋がっている」という考えに基づいています。
しかし、社会のニーズは変化し、社員の働き方も多様化しています。金融業界において顧客との関係性の観点からも社員の満足度の観点からも、変化への対応は不可欠といえるでしょう。
閉じられた情報システム
金融業界では顧客の個人情報や資産を守るため高度なセキュリティ対策が求められています。金融業界において一部の担当者やシステム開発した業者のみが使用できる、閉じられたシステムが目立ちます。
業界が好んで導入したオンプレミスは、DXの遅れをとる大きな原因です。金融業界では他の業界に遅れをとらないためにも、レガシーシステム(古い技術や仕組みで構築され、複雑化したシステム)からの脱却が求められているといえるでしょう。
大企業ゆえの推進コスト上の悩み
大企業は中小企業と比較して、ITインフラの改修や変革などに莫大なコストがかかります。
簡単な事務処理などのDXに取り組む企業は少なくありませんが、企業全体の効率化のためのDXの進行が現状として遅れています。
金融業界におけるDX推進のポイント
金融業界でDXを推進するためには独自の戦略を立て、進めていく必要があります。
ここでは、金融業界におけるDX推進のポイントを紹介します。
DX推進におけるIT人材の確保
2025年の崖とも深く関係するIT人材不足の問題は日本における解決すべき問題の一つです。
DX推進における人材は、大きく2つに分けられます。
・自社をDXに対応させるためのIT人材
・既存システムのメンテナンスや改造などを行う人材
DX推進の重要性が唱えられている昨今、自社にDXを導入するためにはDXに精通した人材が不可欠です。すべての社員がDXやITに抵抗がある企業ではDXの導入は程遠く、次世代のビジネスに対応できない可能性が高いといえるでしょう。
DXの導入にあたって既存システムをすべて変更する必要はありません。既存の情報システムを延命させ、これまでに取得したデータを無駄にしないことも重要です。
企業がDXを進めるためには新システムに強い人材だけでなく、旧システムにも対応できる人材が不可欠なのです。
クラウドサービスの活用
多くの企業が自社専用システムを構築するオンプレミスシステムからクラウドシステムへの移行に進んでいます。クラウドシステムは社員の業務負担軽減の他、コスト削減にも効果的といわれています。
しかし、金融業界ではクラウドサービスについて、サイバーセキュリティ対策を不安視する声が少なくありません。そうした事情により、現状、銀行では9割、その他金融業の6割がクラウドシステムを採用していません。
業界全体における規制緩和とDX対応への方針転換
金融業界は国民の大切な資産を扱うだけでなく、生活インフラ的な役割も担っています。そのため、改革によって得られるメリットよりも、従来のやり方や慣習に従うことで得られる安全や維持を優先します。
金融業界の特質上、従来の方法に従うことも重要でしょう。しかし、それによってDXへの対応が遅れると、業界全体の利益が低迷する可能性も否定できません。
セキュリティ対策の性能も変化しており、現代は非常に高いといえます。契約書やハンコを電子化してもセキュリティを相当な確率で守れます。ITベンダーに不明点などを相談してみることで、現代のセキュリティの高さを実感できるでしょう。
金融業界におけるDXの活用例
DX対応に業界全体で遅れをとっているといわれる金融業界ですが、DXを上手く活用することで得られる効果は少なくありません。
以下、金融業界におけるDXの活用例を紹介します。
クラウドシステムの開発
金融業界がDXの導入を検討するにあたって、注目したいのがクラウドです。クラウドの活用方法として、クラウドでの口座管理、インターネットバンキングの導入などがあります。
銀行の各種手続きや申し込みをインターネットで利用できる仕組みを整えれば、平日日中に店舗に行けない人も利用しやすくなります。
また、クラウドの導入で社員の業務負担は一般的に軽減されます。銀行においてクラウドを導入すれば、行員の事務負担などを大幅に軽減できるとされています。
RPAの活用
RPAとは「Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の略称です。RPAは簡単な作業などを自動化する取り組み全般を指します。
金融業界では社員が日々の業務に追われ、人材に余裕のない企業がほとんどです。RPAを活用することで、一部の業務を自動化でき、人材と時間に余裕をもたらすことができます。
データの活用
DXを導入することで、データの取得も行いやすくなります。取得したデータを基にして、サービスの向上を図れるようになるのもメリットといえるでしょう。
金融業界では融資業務においてデータを活用できます。例えば、ECサイトを運営する小売業の場合、蓄積した取引データをAIで分析し、融資を判断する際に活用できます。融資を受ける側にとっても、審査が短期化されるなどのメリットがあります。
金融業界でDX推進に成功した事例
大和証券グループ
大和証券グループは資産の運用においてツールを導入し、他社保有分も含む全ての金融資産の運用サポートを行っています。資産の種類ごとの金額の他、投資判断や運用のモニタリングにも対応しており、利用者からも好評です。
また、大和証券グループは「制度商品WEBサービス」を導入しました。これにより、株式報酬制度を導入している企業向けの確認や手続きなどをWebで完結できるようになりました。
その他にも、手続きのデジタル化やペーパーレス化にも成功し、DXを進めています。
肥後銀行
肥後銀行はDXを上手く活用して、ユーザビリティの向上に成功しました。
肥後銀行は接客を銀行内で担当する従業員にタブレットを持たせることで、口座開設や入金などの申し込み手続きを各自で行えるようにしました。
タブレットに入力したデータはシステム上にそのまま反映されるため、入力業務や登録業務の負担が軽減されます。また、利用者は申し込み用紙に情報を何度も書く必要がなくなり、手続きをしやすくなりました。
金融業界におけるDX銘柄とは?
2021年6月7日、経済産業省と東京証券取引所は共同で「DX銘柄2021」の選定を行い、発表しました。DX銘柄の企業を3つ、取り組みとともに紹介します。
金融業界の主なDX銘柄企業
・SOMPOホールディングス株式会社
SOMPOホールディングス株式会社はデータプラットフォーム、及び関連サービスの開発を進めています。グループ内外のデータやパートナー企業のテクノロジーを活用して、リアルデータプラットフォームの構築を行い、モビリティや介護、防災などの事業領域で力を発揮し、顧客価値の新たな創出を目指しています。
・SBIインシュアランスグループ株式会社
SBIインシュアランスグループはテレマティクスやブロックチェーンなどの新たな技術や概念を活用したサービスの開発に従事しています。
テレマティクス関連サービスの拡充によって、顧客の安全運転をサポートするプログラムの提供を期待できます。また、ブロックチェーン技術を活用した代理店や募集人管理基盤システムの開発にも成功しました。
・株式会社三井住友フィナンシャルグループ
三井住友フィナンシャルグループは多様なサービスを提供するグループ企業を保有しています。そして、各社が保有する膨大なデータを活かし、新たなサービスの開発を行っています。
例えば、預金や資産運用、住宅ローンなどに関する内部データとグループ会社や外部のデータを連携させることで、パーソナライズドマーケティングを可能とするマーケティングプラットフォームの構築に成功しました。また、現在は、名刺管理、CRM、人事・労務など必要なデジタルツールをワンストップで調達可能なプラットフォームの開発に従事しています。
ハイブリッドテクノロジーズの提供サービス
ハイブリッドテクノロジーズでは、ビジネスデザイン、UIUXデザイン、設計、実装、テスト、リリース、運用、保守まで一気通貫してサービスを提供しております。500名以上の経験豊富なエンジニアにより、迅速かつ高品質なシステム開発が可能です。 アジャイル開発、ウォーターウォール開発、ハイブリッド開発と言った様々な開発手法に対応しており、契約形態に関しましてもラボ型契約と受託型契約の2つから選択いただけます。お客様の状況や開発内容に応じて、開発手法と契約形態を柔軟にご指定いただけますが、それぞれの開発手法、契約形態の特徴の親和性から、アジャイル開発ではラボ型契約が、ウォーターウォール開発とハイブリッド開発では受託型契約を選択されるクライアント様が多数を占めます。
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ハイブリッドテクノロジーズが選ばれる理由
弊社ではクライアント企業様及びエンドユーザー様の声を聞き、UIUXを意識したビジネスデザインを行なっております。 テーマを決めて分析し、仮説を立ててビジネスデザインを行い、プロトタイピング、検証、フィードバックを受け、再度分析から始める。 この一連の流れを、アジャイルスクラム開発に精通した500名以上のエンジニアが光速で回していくことにより、最速でより良いものを実現していきます。 ハイブリッドテクノロジーズには市場の声を現実にするための仕組みとメンバーが揃っています。
まとめ
DX推進は金融業界においても求められています。しかし、金融業界ではセキュリティや慣習の面からも推進が遅れている傾向にあるといえるでしょう。
金融業界においてDXを推進するためには、デジタルやITについて深い知識を持った外部パートナーとの連携を検討すべきケースも少なくありません。社内の業績や利益の低迷を防ぐためにも、DXの早急な導入が求められています。