AI(人工知能)が切り開く21世紀型授業(後半)

投稿日:2021.03.05更新日:2023.03.03


(左からKEIアドバンス社 辰巳様 山口様)

AI開発のプロセスに加え、AIが学んだ膨大なデータをどのように活かすか

「AIが切り開く21世紀型授業(前半)」では、ハイブリットテクノロジーズと河合塾グループのKEIアドバンスによるAIの構築背景についてお伝えしましたが、<後半>では、AI(人工知能)構築の方法や、AIが学んだデータをどのように活用していくのかについてお伝えしたいと思います。

ハイブリットテクノロジーズ広報担当(以下、HT広報)

今回のAI(人工知能)構築と今後の運用に関して質問ですが、AI開発はどのようなチーム構成で行われたのですか?

KEIアドバンス辰巳様(以下、辰巳さん)

当然のことですが、KEIアドバンスとして、これまでAIの開発経験はありませんでした。
ですので、ハイブリッドテクノロジーズとのミーティングでは、当社(KEIアドバンス)が「何をしたいか」や「どのようなことを考えているか」など、話を聞いて頂きながら具体化していきました。

(HT広報)

ハイブリッドテクノロジーズとしても、教育関係のAI構築の経験が豊富にあるわけで無いのですが、その点について不安はありませんでしたか?

KEIアドバンス山口様(以下、山口さん)

「餅は餅屋」の考え方に似ていると思います。

ハイブリッドテクノロジーズが、教育関係のAI構築経験が豊富で、教育業界に関する知見も豊富だった場合、今回構築したAIとは別のものが出来たかも知れません。お互いがお互いの分野に対して不慣れであったことで、ミーティングの場で、曖昧な回答を減らすことができたと思います。また、今回のAIは教育心理学という学問の中で研究されてきた知見を活かしたいと考えていたため、東京大学大学院教育学研究科の岡田謙介准教授にアドバイザーとして参画していただいています。ハイブリッドテクノロジーズのAI開発におけるノウハウと、当社が認識している教育業界の実態とをすり合わせながら開発を進めていき、週1~2回ほど岡田先生から具体的な助言をいただくことで、さらにブラッシュアップさせています。

ハイブリッドテクノロジーズとは、「分からないことは、分からない」とはっきり言い合う関係が出来ていたことに加えて、固定概念がなかったことで、当社からの要望を柔軟に聞いてくれると共に、ミーティングでベストな方法を常に提案し続けてくれたと思います。

また、教育業界に関する知識は、専門家と比べて乏しいものの、当社を取り巻く業界について多くを学んで頂きましたし、中長期的にサポートしてくれる体制を構築して頂いたことも良かったと思います。

(HT広報)

今秋のAI構築で、ブリッジSE、AIの担当もベトナム人でしたが、言葉の壁を感じたことはありますか?

(以下、山口さん)

まず、ブリッジSEに関しては、日本語能力が非常に高く、コミュニケーションに関する障害はありませんでした。また、日本語の専門用語にも詳しく、ベトナム人だから問題があるなどは一切ありませんでした。

また、AIを担当した方は、日本語は得意ではないようでしたが、英語でのコミュニケーションは問題なく行うことが出来ました。また、日本語が話せなかったものの、AI構築に対して、他社の事例研究を徹底して行って頂いたこととプロジェクトを良くして行こうという気持ちが前面に出ており、言葉の壁は大きな障害にはなりませんでした。

また、予算規模や当社の考えを汲み、設計に落とし込んでくださるなど、一緒にお仕事しやすかったです。

(HT広報)

そして、構築されたAIですが、今後どのような展開を計画していますか?

(以下、山口さん)

現状は、AIの構築の第一歩が完了し、AIの学習に必要なサンプルデータをもとに、AIが学びに入っているのが現在のフェーズです。今後は、実利用してデータの収集を行うと同時に、AIの活用による学習効果の向上度等、“結果”を還元させることで、さらにAIの精度を上げていきたいと考えています。

(HT広報)

データによる「学び」が終わった際に、AIを用いてどのようなことを検討していますか?

(以下、山口さん)

大きく分けると3つのことを考えています。

1つ目は、教育現場で活用し、「教える側」と「教わる側」のペアリングの精度を高めたいと考えています。多くの人から人気を集める教師が必ずしも「教わる側」との相性が良いわけでは無いと考えており、個々の生徒にベストな教師とのペアリングを行いたいと考えています。

2つ目は、インターネットを活用して、グローバル規模でも最適な教育シーンを作り出していきたいと考えています。1つ目の考えに近いのですが、教わる側が日本人である場合、教える側も日本人である必要は当然のことながら無いと考えています。個々の生徒と最も相性の良い教師が地球の裏側にいる可能性もあり、仮に地球の裏側にいる「教師」と出会い、学ぶことで、これまで想像もしなかった結果が出る可能性もあると考えています。

そして3つ目は、企業における活用です。企業においても新人研修や配属決定に際して、上司や他メンバーと新入社員のペアリングは非常に重要であると考えています。ペアリングの最適化を行うことで、従業員のロイヤリティ向上や離職率低減につながる可能性があると仮説を立てており、共同研究をしてくれるパートナーを募集したいと考えています。

(HT広報)

ありがとうございました。AIの構築経験を活かして、教育業界のデジタル・トランスフォーメーション推進に必要なことはなんだと思いますか?

(山口さん)

新しいことにためらわずに挑戦することが必要だと思います。

まずは、やってみる。直ぐに成果を求めず、成果を見守りながらやってみる。うまくいかなければ修正して別の方法をトライする、そしてそれらを繰り返す。基本的ですが、何よりも必要だと実感しています。

「教育改革2020」においても、学校教育は、「一斉授業」から「個々人にフォーカスを当てた教育」を重視するようになります。需要があるなら、70%でもやってみる。とにかくやってみることが必要だと思います。

(完)

VUCA時代の教育について

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